自分の事だけが好きな人。

 自分の事だけが好き。自分にしか興味が無い。

 

 Kちゃんは、そんな子でした。

 明るくて、面白くて、可愛らしくて。男女ともに友人の多いKちゃん。彼女とは趣味も合い、仲の良い友人として過ごしていました。

 

 大学はお互いに地元を離れ、別々の所に進学したけれど、年に1,2回は会って遊ぶ仲。

 

 彼女に違和感を覚えたのは、その頃。

 

 大学の話、趣味の話、恋人の話。Kちゃんは楽しそうに色んな話をしてくれて、それを聞いている私もとても楽しかった。

 でも。

 

 彼女は、私の話を聞いてくれませんでした。

 

 Kちゃんが話し終えて、私が「私も聞いて欲しい事があってね」と話し始めると彼女は「うんうん」と言いながらスマホを開き、私の話が終わるまでスマホから目を離す事はなかったのです。

 最初は、私も特段何も思っていませんでした。でも、それが何度も何度もあって、私が話し始めると毎回そうだと気づいてからは、もう駄目でした。

 今回は聞いてくれるかな、聞いてくれますように。そう思いながら、私は口を開くようになり、そうして毎回、彼女はスマホを開く。

 どうやらSNSを見ているらしく、私の話を遮って、「ねえこれ見て!」とTwitterの画面を見せてきたこともあります。

 

 ただ、おそらく、Kちゃんに悪気は無かったのだと思います。ただただ、彼女にとっては当然だったのでしょう。

 

 けれど、私はそんな扱いをされてまで、友達でいたくなかったのです。

 だから、徐々に距離を置きました。幸いにも、Kちゃんは交友関係が広く、どこにいっても誰とでも仲良くなれる子でした。だから私が距離を置いたところで、彼女がそれに気づいた様子もありませんでした。

 スマホ開くの止めて欲しい、って言えばよかったのかもしれません。でも、そうまでして話を聞いて欲しかったわけではなく、ただ私がKちゃんの話を聞きたいと思うようには思っていないんだな、という現実が酷く悲しく、彼女との友人関係を諦めてしまったのです。

 

 大学卒業するころには、彼女の事はすっかりさっぱり忘れてしまっていました。

 私は大学を卒業した後、地元に戻り就職したのだが、偶然にもKちゃんも同じでした。就職先は違ったけれど、彼女も地元に戻って来ていたようです。

 久しぶりにKちゃんから連絡があり、迷った私は、会うことにしました。

 時間も経ったし、もうスマホを見る事はないかもしれない。そんな期待をしてしまったのです。

 

 Kちゃんは学生時代と同じように、ころころ変わる表情でたくさん話してくれました。ランチを食べ終え、デザートが運ばれてきた頃。「堤ちゃんは?仕事とかプライベートとか、最近どう?」とKちゃんが聞いてくれたので、私は口を開きました。

 

 5分も経たずして、Kちゃんはスマホを開いていました。

 私は、早々に話を切り上げました。

 

 やっぱりか。

 なんてそう思って。彼女と別れた後すぐに、彼女と繋がっていたSNSを全てブロックしてしまいました。フェードアウトではなく、カットアウトしなければ私が疲れるだけだと考えたのです。

 それからのKちゃんの事は一切知りません。

 中学生の頃はお互いの家に行く程度には仲の良い友達だったのにな、と思うとやるせませんでしたが、時間が経つと忘れていきました。

 

 けれど、Kちゃんとの繋がりを絶ってから半年ほどして、Kちゃんと共通の友人に会いました。

 その時にKちゃんとの事を話したら「Kちゃんは昔からお姫様だからね。自分の事だけが大好きなの。私が話しててもスマホ開くよ。」と言われました。それはもうすごく腑に落ちたのです。

 自分の話を話したいだけ。自分以外の話はどうでも良い。そんな話より、スマホSNSを見る方が彼女にとっては有意義だったのでしょう。

 

 私はKちゃんが好きだったんだと思います。

 だからこそ悲しくて、社会人になった今ならなんて期待したりしたのです。

 

 もう彼女に会うことはありません。

 話の途中でスマホを見るな、と言いたいわけではないのです。連絡が入ったり、予定や話題を調べたりすることもあります。

 でも、友人が話をしている最中にSNSを開き、話を全く聞かないというのは失礼ですよね。それが当たり前になっていたら、それはもう友人ではない、とすら思います。

 

 といいますか、大好きな友人と話をしている最中に、SNSなんて見ている暇なくない?というのが私の率直な感想です。

 

 友人でいてくれる人たちを、大切できる人になりたいですね。